完全包囲 御曹司の秘めた恋心

颯介の事情

◆◆◆◆◆

俺が初めて彼女と顔を合わせたのは、姉貴の婚約パーティーだった。

「花村環奈と申します。この度は、ご婚約おめでとうございます」

ロイヤルブルーのドレスワンピースを纏った容貌は、くっきりはっきりとした目鼻立ち。ショートスタイルの黒髪は艶やかで、堂々とした振る舞いの合間に見せるはにかんだ笑顔は、絶対的な魅力に溢れていた。

俺の鼓動が激しく脈打つ。息が苦しい。
自分の感情を上手くコントロールできず、ぶっきらぼうな挨拶になってしまった。
もちろん、そんな挨拶をされれば気持ちの良いものではない。
彼女の強張った表情に罪悪感を抱き、逃げるようにその場から立ち去った。

だが、どうしても彼女のことが気になり、ずっと目で追っていた。


「颯介、素敵なお嬢さんだな。さすが、桃香さんの妹さんだ」

親父が俺の耳元で囁く。

「私たちの目に狂いはない。お前もそうは思わないか? このまま見合いの話を進めるぞ」

俺は深く頷いた。
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