完全包囲 御曹司の秘めた恋心
親父から見合いを決行すると言われ、嬉しさを隠しきれない。
だが、一気に不安が押し寄せる。
今のままでは無愛想な男のままだ。見合いをしても断られる可能性の方が確実に高い。
さて、どうしたものか。
あれこれと思考を巡らせていると、広い会場の一角が不穏な空気に包まれた。
慌てて熊野御堂家のテーブル席に視線を移すと、そこに彼女の姿はなかった。
嫌な予感が脳裏をよぎり、今度は不穏な空気の方へ視線を移す。
そしてその予感は的中した。
環奈が水でも被ったような姿で立ちすくんでいる。周りでは、数人の令嬢が蔑んだような視線を彼女に向けていた。
助けなければ!
足を踏み出したその時、切実な彼女の声が、会場に響き渡った。
「他のものが飲みたかったからわざとこぼした。だったら私は許せない。このオレンジジュースが人の胃袋に収まるまで、どれだけ手間暇かかっているか知っていますか? お米一粒だってそうです。苗が稲に育つまで、大切に育てているんです! 水を張った田んぼに入って苗を植え、生育を妨げる草を取り除いて、害虫がつかないように常に気を張って、ようやく育った稲が台風のせいで全部ダメになったりする。それでも、美味しいって言ってもらえるようなお米を作るために、毎日必死に頑張っている人がいるんです! オレンジジュースも同じ。わざとこぼされていいものなんてないんです!!!」
衝撃だった。
だが、一気に不安が押し寄せる。
今のままでは無愛想な男のままだ。見合いをしても断られる可能性の方が確実に高い。
さて、どうしたものか。
あれこれと思考を巡らせていると、広い会場の一角が不穏な空気に包まれた。
慌てて熊野御堂家のテーブル席に視線を移すと、そこに彼女の姿はなかった。
嫌な予感が脳裏をよぎり、今度は不穏な空気の方へ視線を移す。
そしてその予感は的中した。
環奈が水でも被ったような姿で立ちすくんでいる。周りでは、数人の令嬢が蔑んだような視線を彼女に向けていた。
助けなければ!
足を踏み出したその時、切実な彼女の声が、会場に響き渡った。
「他のものが飲みたかったからわざとこぼした。だったら私は許せない。このオレンジジュースが人の胃袋に収まるまで、どれだけ手間暇かかっているか知っていますか? お米一粒だってそうです。苗が稲に育つまで、大切に育てているんです! 水を張った田んぼに入って苗を植え、生育を妨げる草を取り除いて、害虫がつかないように常に気を張って、ようやく育った稲が台風のせいで全部ダメになったりする。それでも、美味しいって言ってもらえるようなお米を作るために、毎日必死に頑張っている人がいるんです! オレンジジュースも同じ。わざとこぼされていいものなんてないんです!!!」
衝撃だった。