完全包囲 御曹司の秘めた恋心
「……颯介くんに冷たく笑われたと……」

その場の空気が凍りつく。

お、俺⁉︎ 俺がいつ……

俺はハッとした。みるみるうちに全身から血の気が引いていく。
あの時だ。環奈が飛び出す直前、視線が合ったあの時だ。

「おい、颯介、お前まさか」

「……俺の、俺のせいだ。でも、冷たく笑ったんじゃない!」

「だが、環奈さんはお前から冷たく笑われたと受け取っている」

「違う……違うんだ……」

「花村さん、この度は、誠に申し訳ありませんでした。なんとお詫び申し上げて良いか……」

「いいえ、ただ一つだけ……」

父親が俺の目の前に立ち、俺を見据える。

「颯介君、オランウータンとはいったいどういうことなのかな?」

「え?」

「環奈は、自分はオランウータンだからと言っていたものだから」

「わかりません」

「そうか……」

オランウータン? なんだよそれ!

「私はこれで失礼致します」

父親の背中が段々遠ざかる。

これで終わりなのか? もう二度と環奈と会うことはできないのか? 無理だ!絶対に無理だ!
そう心は叫んでいるのに、声を上げることさえできなかった。
何もできない自分が情けなく、無力さというものを初めて思い知った。

祖父が俺の前に立ち、両手を肩に乗せる。
乗せられた手は、鉛のように重かった。

「颯介、説明しなさい」

俺は、環奈に対する想いや、これまで起こった出来事を包み隠さず告白した。
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