完全包囲 御曹司の秘めた恋心
桃香が次元の違う生活を送っている中、中学生になった私は、相変わらず野外活動に精を出していた。
陸上部に所属し、毎日陽射しを浴び、本来の肌の色がわからないほど日焼けしていた。笑うと歯だけが白い。
私の変わらぬ日常。
けれど、その日常が一変する。
「何ですってぇ!!!!!」
夕食を終え、家族が集まるリビングに母の声が響き渡った。
通話を終えた母が呆然としている。
「どうしたんだ?」
父の問いかけに「どうしましょう」と深い溜息をつく。そしてすぐに、鋭い視線が、陸上世界大会の中継画面を前に、アイスクリームを頬張っていた私に向けられた。
「えっ、何⁉︎」
「環奈、大変なことになったわ。あなた、パーティーにお呼ばれしたのよ」
「は?」
「桜子さんの婚約披露パーティーよ」
「婚約⁉︎ 桜子さんはまだ高校生だろ?」
父が驚きの声をあげる。
「幼い頃から婚約は決まっていたそうよ。そして正式に婚約式が執り行われるんですって。そのパーティーに桃香も招待されたんだけれども、妹さんも是非にって言われたらしいのよ。妹はそういう場所に慣れていないし、ご迷惑をおかけするかもしれないって断ったようだけど、聞く耳持たずだそうよ」
母の視線がより厳しくなる。
「環奈、今から特訓よ」
「特訓?」
「粗相のないように特訓するのよ。礼儀作法やら何やら」
「えぇぇぇぇ!!! 何で私が⁉︎ ヤダよ! パーティーなんかより陸上世界大会観に行きたい」
「ヤダじゃない! やるのよ!」
こうなったら、そこに私の意思は存在しない。
パーティーまで、母による猛特訓が始まった。
「桃香に恥をかかせないようにしなさい」
耳にタコができるほど聞かされ、ドレスのようなワンピースも買い与えられた。
挨拶、言葉遣い、テーブルマナー、地獄の特訓を終え、とうとう上京する日を迎えた。
陸上部に所属し、毎日陽射しを浴び、本来の肌の色がわからないほど日焼けしていた。笑うと歯だけが白い。
私の変わらぬ日常。
けれど、その日常が一変する。
「何ですってぇ!!!!!」
夕食を終え、家族が集まるリビングに母の声が響き渡った。
通話を終えた母が呆然としている。
「どうしたんだ?」
父の問いかけに「どうしましょう」と深い溜息をつく。そしてすぐに、鋭い視線が、陸上世界大会の中継画面を前に、アイスクリームを頬張っていた私に向けられた。
「えっ、何⁉︎」
「環奈、大変なことになったわ。あなた、パーティーにお呼ばれしたのよ」
「は?」
「桜子さんの婚約披露パーティーよ」
「婚約⁉︎ 桜子さんはまだ高校生だろ?」
父が驚きの声をあげる。
「幼い頃から婚約は決まっていたそうよ。そして正式に婚約式が執り行われるんですって。そのパーティーに桃香も招待されたんだけれども、妹さんも是非にって言われたらしいのよ。妹はそういう場所に慣れていないし、ご迷惑をおかけするかもしれないって断ったようだけど、聞く耳持たずだそうよ」
母の視線がより厳しくなる。
「環奈、今から特訓よ」
「特訓?」
「粗相のないように特訓するのよ。礼儀作法やら何やら」
「えぇぇぇぇ!!! 何で私が⁉︎ ヤダよ! パーティーなんかより陸上世界大会観に行きたい」
「ヤダじゃない! やるのよ!」
こうなったら、そこに私の意思は存在しない。
パーティーまで、母による猛特訓が始まった。
「桃香に恥をかかせないようにしなさい」
耳にタコができるほど聞かされ、ドレスのようなワンピースも買い与えられた。
挨拶、言葉遣い、テーブルマナー、地獄の特訓を終え、とうとう上京する日を迎えた。