完全包囲 御曹司の秘めた恋心
本番当日、私たちはパーティーが行われる都内の高級ホテルに到着した。
エントランスを抜け、初めて目にする豪華なロビーに気後れしてしまう。
まるで物語の世界に放り込まれたようだ。
「環奈、大丈夫?」
「う、うん」
「じゃあ、行くよ」
私は桃香の背に隠れるようについて行く。
パーティー会場に足を踏み入れると、そこはエントランスとは比にならないほどの煌びやかな空間が広がっていた。
周りを見回すと、テレビでしか見たことのない人たちが、あちらこちらで挨拶を交わしている。
夢か現実かわからなくなりそうだ。
私は桃香に連れられ、親族席に向かう。
熊野御堂家の人たちに丁寧に挨拶して回る桃香に続いて、練習通り挨拶をする。
「花村環奈と申します。この度は、ご婚約おめでとうございます」
初めてお目にかかった総帥は、戦国時代を生き抜いた総大将といった感じで、とんでもなく圧が凄かった。けれど、喋り口調は穏やかで、桃香や私に対してはずっと笑顔を向けてくれていた。それは、総帥の息子で桜子の父親も同様。母親に至っては、あれこれと事細かに世話を焼いてくれた。
とりあえずは歓迎されているようで、胸を撫で下ろす。
だが、熊野御堂一家の中で一人だけ、私に冷たい視線を向ける人物がいた。
栗色のサラサラヘアーに華奢な体格。桜子の弟で、熊野御堂財閥の御曹司、熊野御堂颯介だ。
彼は私が挨拶をすると、軽く名乗り、ぷいっとそっぽを向いてどこかへ行ってしまった。
「環奈ちゃん、愛想がなくてごめんなさいね。照れてるのよ。颯介は環奈ちゃんと同じ中学一年生。小さいから小学生に見えるでしょ」
確かに、私より背が低く、年下だろうと想像していた。けれど、周りの大人でさえも平伏させてしまいそうなその容貌は、圧倒的なオーラを放っている。
「これから仲良くしてやってね」
「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
本人ではなく、母親に挨拶をするという妙な光景だ。それでも、母親は満足そうな笑みを浮かべていた。
エントランスを抜け、初めて目にする豪華なロビーに気後れしてしまう。
まるで物語の世界に放り込まれたようだ。
「環奈、大丈夫?」
「う、うん」
「じゃあ、行くよ」
私は桃香の背に隠れるようについて行く。
パーティー会場に足を踏み入れると、そこはエントランスとは比にならないほどの煌びやかな空間が広がっていた。
周りを見回すと、テレビでしか見たことのない人たちが、あちらこちらで挨拶を交わしている。
夢か現実かわからなくなりそうだ。
私は桃香に連れられ、親族席に向かう。
熊野御堂家の人たちに丁寧に挨拶して回る桃香に続いて、練習通り挨拶をする。
「花村環奈と申します。この度は、ご婚約おめでとうございます」
初めてお目にかかった総帥は、戦国時代を生き抜いた総大将といった感じで、とんでもなく圧が凄かった。けれど、喋り口調は穏やかで、桃香や私に対してはずっと笑顔を向けてくれていた。それは、総帥の息子で桜子の父親も同様。母親に至っては、あれこれと事細かに世話を焼いてくれた。
とりあえずは歓迎されているようで、胸を撫で下ろす。
だが、熊野御堂一家の中で一人だけ、私に冷たい視線を向ける人物がいた。
栗色のサラサラヘアーに華奢な体格。桜子の弟で、熊野御堂財閥の御曹司、熊野御堂颯介だ。
彼は私が挨拶をすると、軽く名乗り、ぷいっとそっぽを向いてどこかへ行ってしまった。
「環奈ちゃん、愛想がなくてごめんなさいね。照れてるのよ。颯介は環奈ちゃんと同じ中学一年生。小さいから小学生に見えるでしょ」
確かに、私より背が低く、年下だろうと想像していた。けれど、周りの大人でさえも平伏させてしまいそうなその容貌は、圧倒的なオーラを放っている。
「これから仲良くしてやってね」
「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
本人ではなく、母親に挨拶をするという妙な光景だ。それでも、母親は満足そうな笑みを浮かべていた。