カバーアップ
そのとき、恋って突然落ちるものだと知った。
……ああ、この人が好きだ。
自覚した途端、一気に世界が輝いていった。
でも、同時に不安になる。
きっとこの人は、私を好きにはなってくれない。
その証拠に彼の左手薬指には、指環が光っていた。
菅野課長を食事に誘ったのは、ただ単にお礼だった。
「別によかったのに」
笑いながら彼が、私の前の席に座る。
「いえ。
それでは私の気が済みませんので」
つい先日、私は大きなミスを犯すところだった。
課長が気づいて、適切に処理してくれなければ、会社に大きな損害を出していかもしれない。
だからこうやって、課長を食事に招待するのは当然なのだ。
「じゃあ、遠慮なく」
店員が置いたメニューを、課長が開く。
「なんにする?
肉盛り合わせは絶対だよね」
「そうですね……」
一緒にメニューをのぞき込む。
招待したのは私のはずなのに、課長は私に苦手なものはないかとか聞き、気遣ってくれた。
センター分けにされた、さらさらのミドルヘア。
涼やかな目もとを、銀縁スクエアの眼鏡が引き立てる。
……ああ、この人が好きだ。
自覚した途端、一気に世界が輝いていった。
でも、同時に不安になる。
きっとこの人は、私を好きにはなってくれない。
その証拠に彼の左手薬指には、指環が光っていた。
菅野課長を食事に誘ったのは、ただ単にお礼だった。
「別によかったのに」
笑いながら彼が、私の前の席に座る。
「いえ。
それでは私の気が済みませんので」
つい先日、私は大きなミスを犯すところだった。
課長が気づいて、適切に処理してくれなければ、会社に大きな損害を出していかもしれない。
だからこうやって、課長を食事に招待するのは当然なのだ。
「じゃあ、遠慮なく」
店員が置いたメニューを、課長が開く。
「なんにする?
肉盛り合わせは絶対だよね」
「そうですね……」
一緒にメニューをのぞき込む。
招待したのは私のはずなのに、課長は私に苦手なものはないかとか聞き、気遣ってくれた。
センター分けにされた、さらさらのミドルヘア。
涼やかな目もとを、銀縁スクエアの眼鏡が引き立てる。
< 1 / 11 >