カバーアップ
ちょうどいい厚さの唇は、キスしたら気持ちよさそうだ。
年もまだ三十二歳とそこそこ若く、こうやって細やかな気遣いのできる彼はモテそうだが、実際は女性社員には恋愛対象から外されていた。
――その理由は。
「じゃあ、お疲れ」
「お疲れ様です」
届いたビールで軽く乾杯。
喉が渇いていたのか、課長は半分まで一気に飲んだ。
「でもよかったね、上手くいって」
課長が私を見て、にっこりと微笑む。
「菅野課長が気づいてくれたおかげです」
彼に向かって勢いよく頭を下げた。
もし課長が私のミスに気づいてくれなければ今頃、会社を追われていたかもしれない。
課長にはもう、感謝してもしきれない。
「僕はなにもしてないよ。
ミスがわかってから桜井が頑張った結果だし」
笑いながら彼は、前菜代わりに取ったサラダを食べている。
嘘だ、課長の手助けがあったからこそ、適切に処理して挽回できた。
でも、課長はいつもそうなのだ。
僕はなにもしてない、君が頑張った結果だよって部下に功績を譲ってくれる。
そういう課長だから、みんなから慕われていた。
その後も適当な話をしながら、飲んで食べる。
年もまだ三十二歳とそこそこ若く、こうやって細やかな気遣いのできる彼はモテそうだが、実際は女性社員には恋愛対象から外されていた。
――その理由は。
「じゃあ、お疲れ」
「お疲れ様です」
届いたビールで軽く乾杯。
喉が渇いていたのか、課長は半分まで一気に飲んだ。
「でもよかったね、上手くいって」
課長が私を見て、にっこりと微笑む。
「菅野課長が気づいてくれたおかげです」
彼に向かって勢いよく頭を下げた。
もし課長が私のミスに気づいてくれなければ今頃、会社を追われていたかもしれない。
課長にはもう、感謝してもしきれない。
「僕はなにもしてないよ。
ミスがわかってから桜井が頑張った結果だし」
笑いながら彼は、前菜代わりに取ったサラダを食べている。
嘘だ、課長の手助けがあったからこそ、適切に処理して挽回できた。
でも、課長はいつもそうなのだ。
僕はなにもしてない、君が頑張った結果だよって部下に功績を譲ってくれる。
そういう課長だから、みんなから慕われていた。
その後も適当な話をしながら、飲んで食べる。