特効薬と副作用
 不意に徹が足を止めた為、希は気持ちを見透かされたのかとドギマギした。

「ど、どうしたんですか?」

 声が上擦り、恥ずかしさが込み上げる。

「あのさぁ……会うの二度目でこんなこと言ったら軽い奴だと思われるかもしれないけど、言っておかないと後悔しそうだから」

 そう前置きしてから、徹は続ける。

「俺はまた今日も、別れ際に次回の約束を取り付けたいと考えていたんだ」
「そ、そうなんですか」

 期待はしていたが、突然心の内を明かされ動揺した。

「そしてそれを数回重ねてから、交際を申し込もうと考えていた」
「え……」

 面食らう希をよそに、更に徹は続ける。

「だけど、希ちゃんは今フリーみたいだから、この後、駅で俺と別れてから別の男性とデートすることだって可能なわけで……」
「えぇっ!?」

 思わず大きな声が出てしまう。

「その男性がもし素敵な人だったら、どうなるかわからない」
「そんなこと……」
「だから、俺がそういう気持ちでいるってことだけでも、先に伝えておこうと思って」

 これほどに胸がときめいた告白は初めてだった。
 友人から聞いていた通り、徹がとても誠実な男性だと窺えた。

「じゃあ、私も伝えておきます」
「え、何?」

 今度は徹が動揺を見せた。

「私はまた今日も、別れ際に徹さんから次回の誘いがあればいいなと思ってました」

 徹の強張っていた表情がみるみるうちに笑顔に変わった。

「もうひとつ付け加えておくと、徹さん以外にデートを考えている男性はいません」

 言わずもがな、この日が二人の交際記念日となった。

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