孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
幕間 王都にて
いくら梅雨で大雨が降っているとはいえ、朝が来ても昼が来ても夜のように暗いなんて初めてのことだった。リイラと昼食をした後、僕は王城から呼び出しを受けた。
通された部屋では国の重鎮が二十名ほど集まっていて物々しい雰囲気が漂っていた。
「マティアス、お前も未来の王としてこの会議には参加してもらう。国の今後を左右する話し合いだ」
「はい」
父の真剣な表情に僕はしっかりと頷いてみせる。その場の雰囲気から何か深刻なことが起きたことはわかるのだが、初めて国に関わらせてもらえる密かな喜びがあった。
今まで帝王学や国史を学ばせてもらっていたが、学園を卒業するまでは国の政りごとに関しては何一つ教えてもらえないと決められていたからだ。
「暗黒期が来た。その意味がわかるな」
「今日のこの暗さは暗黒期が訪れたということなのでしょうか」
「そうだ」
「ではこの会は白の花嫁選定について、でしょうか」
「いや……昨秋にお告げがあり、白の花嫁は既に送られた」
――昨秋。やはりそうだ、間違いない。
「その花嫁とは、アイノ・プリンシラ嬢でしょうか」
私の質問に、父は目を細めて頷いた。
「さすがマティアス様は察しがよろしいですね」と大臣の一人が微笑む。
「それでは、今回の暗黒期は問題が起こりませんね」
「いや違う」
答えを先回りして正解を出し続けていたつもりだったが、父の冷たい声が返ってきた。