孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「魔法省が何度かアクションを取っていると思うが、返事はあったか?」
「いえ、ございません。何度か門の中に文を差し込んだり、使いの者を出しているのですが返事はありません」
「前回のこともありますから、警戒するでしょうね」
「しかし王国側に魔人を引きずりださないことには、どうしようもありません。こちらから魔の森の奥までこちらが出向くのは分が悪すぎます」
「魔物をけしかけられたら、数で負けてしまいますからね」
「そこで一つ案があるのですが『白の花嫁』が誤りだったとするのです。正しいお告げがあったと正しい花嫁を送り出すのはどうでしょうか」
一人の大臣が思いついたように提案するが、他の大臣は難しい顔で首を振る。
「もう遅い。暗黒期は始まってしまった。初めて見る人間を花嫁とみなす。新しい花嫁を差し出しても相手になどされん」
「別に『白の花嫁』に特別な力があるわけではないしな」
「では、花嫁――アイノ嬢をおびき出すのはどうでしょうか。もう特別な存在となった花嫁をおびき出せば、魔人は必ず助けにくるはずです」
「プリンシラ侯爵。アイノ嬢の母上などはどうか」
傍観を決め込んでいたプリンシラ侯爵に皆の目が向く。彼は娘が生贄で、おびき寄せる材料に使うと言われているにも関わらず涼しい顔で答えた。