孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

「アイノの母は継母でして。二人はうまくいっていませんでしたから」

「ではあなたがご病気だということにすればいいのではないか」

「私も長年娘と離れて暮らしていまして先日のお告げで数年ぶりに顔を合わせたのみです。父とも思っていないでしょう。

 ――家族では娘は帰ってきませんよ。ああ、でもそうだ。彼女には唯一友人がいました。リイラ・カタイスト。例の特別入学生の平民ですよ」

 リイラの名前が出てくると思っていなかった。
 僕の身が固まるのと反対に、その場にいた大臣たちの顔はほころぶ。

「ああ! 元々花嫁候補だった平民ではないか!」
「そうだ、彼女が『本物の白の花嫁』だったということにしてはどうだ」
「いい案じゃないか? 国の正式な『白の花嫁』はリイラ・カタイストだと。『白の花嫁』は一人だ。自称『白の花嫁』が国に戻ってこないのならば、リイラ・カタイストが偽の花嫁ということになり、花嫁を騙った反逆罪で処刑される、という筋書きはどうだろうか?」
「それならばさすがにアイノ・プリンシラも戻って来るでしょう」
「友人が自分の代わりに処刑されるのだからな」

 何を言っているんだろうか。
 リイラを処刑するとうそぶき、アイノ嬢をおびき寄せる?そして魔人を滅ぼして、アイノ嬢は……?

「リイラが花嫁?」
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