孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 リイラをよくよく観察して感じたことだけど、リイラも転生者ではなさそうだ。転生小説や漫画では、何人も同時に転生するということが往々にしてある。

 もしリイラも転生者で「アルト最萌えなの! メリバでもなんでもいいからアルトルートにいく。私が生贄に立候補するわ!」というならば、白の花嫁レースに勝てる気はしなかった。

 しかしリイラは転生者のそぶりはなかったし、順調に攻略対象の一人である王子との恋を育む予感がしている。
 まだ出会いイベントと、サンドラのいじめからの慰めるイベントしか起こっていないけれど、リイラは王子に憧れの気持ちを抱き始めている。

 上級生の王子ルートに入るためには、知力パラと屋上庭園で逢瀬を重ねることが必要だ。

 私は死に物狂いで勉強してリイラの知力パラ上げを影ながら支え、王子がいそうな時間に屋上庭園に誘った。屋上庭園は正直しょぼくて不人気で誰も来ないから、王子がこっそり一息つける居場所になっている。
 私は先生に呼び出されたとか、サンドラにいじめられた(悪者にしてごめん!)とか適当なことを言ってリイラとの約束に何度か遅れた。
 王子とリイラが顔見知りになり距離が縮まったのを確認してからは、あまりでしゃばらないようにした。
ヒロインと攻略対象なのだ、私がアシストしなくても恋が走り出せば止まらない。国を敵にしても恋は止められないのだから。


 私が、王子✕リイラが好きなのもあるけど、王子ルートは唯一攻略対象が全員生き残るルートでもある。国の闇に切り込んで、彼が新国王になる大団円だ。この世界に生き、結末を知る者としてはこの展開が一番ありがたい。



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