孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
02 生贄、私にやらせてください
「どうしたんだアイノ。お前が会いたいというだなんて」
父は笑顔を浮かべているが、明らかに困惑を隠せない顔をしていた。何度もメガネをクイクイしていて、手を動かしていないと落ち着かない、そんな様子だ。
私が父を呼び出すなんて初めてのことだから警戒してるのだろう。
休日の昼下がり、城下町のケーキショップにて。見覚えがあるのはゲームでも攻略対象とのデートでよく使ったから。
私はせっかくの機会だし父の金だし、目の前にケーキをずらりと並べて優雅に食べる。
父は一体何を私が言い出すか不安なのだろう。ご希望通り胸ぐらを掴んでもいいのだけど、私には仕事があるのだ。
「お父様に会いたくなっただけです」と反吐が出るセリフを甘えた声で言う。吐きそうだが。
「そうか。久しぶりだからな。何か欲しいものはないか」
きまずい顔を隠そうともせずに父は言った。娘への機嫌の取り方は金しかわからないらしい。
「お父様とお話したかっただけですわ」と言って、ひとまず学園生活について話すことにした。世間話を挟んでおきたい。
リイラという平民の友達が出来たと告げると父の顔は微妙に変化した。平民を見下す貴族の悪いところが出てる。
ますます父の嫌いポイントがたまったが、とりあえず私は世間話を進めた。
「アイノ。すまない。そろそろ予定があるんだ」