孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
目を開けると、真っ赤な顔が目の前にあって私はその熱い頬に右手を触れた。
「冷たい。魔力は流れていないはずだが」
「アルト様のほっぺが熱いからですよ」
「そうか」
そう呟くとアルト様は口をつぐみ、目線をどこにおいていいのか悩んでいる。
「実を言うと、昨夜のキスに落ち込みました」
「……すまなかった」
「あ、ごめんなさい。違うんです。キスが嫌なんじゃなくて、私は『白の花嫁』としてしか求められていないのかなって悩んで。自分に嫉妬というか、うまくいえないんですけど……ええと、つまり……」
『白の花嫁』だというのに『白の花嫁』が嫌で、自分に嫉妬って……何を言ってるんだ、私は!
アルト様がそんな私をしばし見つめてからデスクに向かって指を向ける。デスクから何かが飛んできてアルト様の手の中に収まった。
「これを」
アルト様が私に見せたのは小さな包みだ。開けてみろと言われたので青いリボンをといていくと小さい箱が現れて、中に入っているのは雪の結晶のような指輪だった。
「これは?」
「……この家に代々伝わる指輪だ」
「代々伝わる……? 魔道具のようなものですか?」
「ちがう!」
アルト様は私から箱を奪ったかと思うと、次に私の手首をぎゅっと掴んだ。
「……?」
アルト様の手が放たれたときに左薬指にきらめくのは雪の結晶だ。
「魔人が花嫁に贈る指輪だ。……これをクリスマスに渡すつもりだった」
言葉の意味を確かめるためにアルト様を見上げると、彼は今度は目をそらさずに私をまっすぐ見ていた。
「冷たい。魔力は流れていないはずだが」
「アルト様のほっぺが熱いからですよ」
「そうか」
そう呟くとアルト様は口をつぐみ、目線をどこにおいていいのか悩んでいる。
「実を言うと、昨夜のキスに落ち込みました」
「……すまなかった」
「あ、ごめんなさい。違うんです。キスが嫌なんじゃなくて、私は『白の花嫁』としてしか求められていないのかなって悩んで。自分に嫉妬というか、うまくいえないんですけど……ええと、つまり……」
『白の花嫁』だというのに『白の花嫁』が嫌で、自分に嫉妬って……何を言ってるんだ、私は!
アルト様がそんな私をしばし見つめてからデスクに向かって指を向ける。デスクから何かが飛んできてアルト様の手の中に収まった。
「これを」
アルト様が私に見せたのは小さな包みだ。開けてみろと言われたので青いリボンをといていくと小さい箱が現れて、中に入っているのは雪の結晶のような指輪だった。
「これは?」
「……この家に代々伝わる指輪だ」
「代々伝わる……? 魔道具のようなものですか?」
「ちがう!」
アルト様は私から箱を奪ったかと思うと、次に私の手首をぎゅっと掴んだ。
「……?」
アルト様の手が放たれたときに左薬指にきらめくのは雪の結晶だ。
「魔人が花嫁に贈る指輪だ。……これをクリスマスに渡すつもりだった」
言葉の意味を確かめるためにアルト様を見上げると、彼は今度は目をそらさずに私をまっすぐ見ていた。