孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
26 不安はひとつもない幸せなだけの夜
「んふふふ」
夕食の席でごきげんなのはショコラだ。
私とアルト様が作った焼き魚に豪快にかぶりつきながらずっとニコニコとしている。
ショコラの視線が私の指に向けられるから、私がじゃん!と指輪を見せるとショコラも「きゃあ!素敵!」と騒いだ。アルト様は白けた目を向けているけど口角はかすかに上がっている。
久々の二人と一匹の食事が嬉しくて、私も頬はゆるみっぱなしだ。ショコラと姉妹のようにはしゃいで、アルト様が微笑んでくれる。幸せな時間だ。
「ショコラもう行っちゃうの?」
プリンを食べ終えたショコラはすぐに犬の姿にかわり森に戻ろうとしている。
「うん。なんだかちょっと魔物たちのざわめきを感じるの。二人が仲良くしてくれていたら、アルトの制御もうまくいくだろうし、きっと問題ないと思うわ」
「すまない、ショコラ。本来は俺が魔物を守る立場だというのに」
「あら違うわよ。暗黒期の魔人は家にいて花嫁との新婚生活を過ごすことが一番。魔力を制御しきれない者がきても混乱を招くだけ。いつだって他の魔人が対応して森を維持してきた。ここは私の――使い魔の出番よ」
「……ありがとう」
「それよりそろそろ時間じゃないかしら? 早く服を脱がないと弾け飛ぶわよ」
ショコラは笑顔を見せると、椅子から飛び降りた。
「アイノの食事がないと元気が出ないから、また食べに来るわ! じゃあ二人は仲良くね!」
トテトテと扉に向かい、前足で器用にバイバイの仕草をすると部屋から出ていった。