孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
国王は父に「お前が話したのではないだろうな?娘の狂言だという可能性は?」と聞いた。
「そんなまさか……ありえません。そんな狂言をする必要もありませんし……」
「まあそれもそうだな」
重鎮や父の顔は青ざめていて、国王も渋い顔で何やら考え込んでいる。皆の言葉や反応にはやはり違和感を感じる。
「夢の中で預言者からお告げがありました。今から一年後、この世界は暗黒に包まれるだろうと」
「一年後?」
「正確な時期まではわかりませんが」
彼らはまた顔を見合わせてザワザワが広がる。ザワザワしすぎていて言葉が聞き取れない。しゃっきり一人ずつ喋って欲しい。
「本当のようだな……」
「私の話を信じてもらえるのですか?」
「ああ。誰も暗黒期の訪れの時期はしらん。それにお前がその嘘をついて何の得になろう。ところで、白の花嫁とは何か知っているか?」
国王は頭が痛いのか眉間を指で押さえながら、私に聞いた。
「魔王の花嫁になると聞きました。魔王は暗黒期を迎えると本能的に人間の花嫁を欲して乱心します」
「そうだ。白の花嫁となってくれるのか」
「この国のためならば命を捧げることも惜しくありません」
出来るだけ凛と聞こえるように言った。
「ふむ」
「暗黒期が来る前に魔王の元に行かせてもらえませんか? 暗黒期が始まると同時に魔物も暴れるでしょうから、被害は少ない方がいいでしょう」
場の空気がザワザワとしたものからしんみりとした物に変わることに気づく。皆、私をこの国を救う慈悲深い聖女だと思ってくれたに違いない。
「イルマル王国のために申し出てくれたこと感謝する。プリンシラ侯爵、お前の娘はこの国の誇りだ」
「……ありがとうございます!!」
娘が生贄になるんだから、演技でもいいからもう少し悲しむくらいしたらどうだろうか。
娘が魔王に嫁ぐことに涙一つもこぼさないくせに、自分が褒められて嬉し涙にじませるとか、親の資格ゼロ親である。
こうして私は「白の花嫁」に立候補して、魔王のもとに嫁ぐことが決定したのだ。