孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

幕間

 
 国王の執務室にて。五名の重鎮が重々しい表情で集まっていた。その中にはプリンシラ侯爵の姿もある。

「それぞれ報告を頼む」王が静かに口を開くと、一人の大臣が前に出た。

「ではまず私から。子供が襲われたことで、国民の魔人への恐怖心や悪感情は増長しております。それは王都だけにとどまらず全国に広がっています。元々暗黒期の訪れで国民の不安は募っているところでしたから」
「号外が功を奏したな。子供はどうなった?」
「現在王都の医院で厳重に保護しています。一週間もあれば完治するとのことです」
「それでは国民の感情は波立たないな」
「――対応しておきます」
「子供の家族も、頼んだぞ」

 王に言葉に大臣はしっかり頷いた。彼の代わりに恰幅のいい防衛大臣が代わりに前に出てきた。

「軍部からの報告です。
 一つ目は臨時魔法士の件について。適性検査で選出された百二十二名ですが、五名は不適合と判定、一名は研修中の事故で不適合。彼らは離脱させたのちに処分が済んでいます」
「残りは使えそうか?」
「ええ、恐ろしいほどに。魔人をせん滅させた後に彼らをどう処分するかを考えねばなりませんよ……。王立騎士団所属の魔法士よりも能力が上回るものもいますから」
「このまま王立騎士団で雇うのは?」
「平民に英雄は必要ない」

 国王は力を込めて言った。防衛大臣は困った表情をしたのちに「彼らの処遇については検討しておきます」と述べた。

「二つ目は軍基地の件です。建設は全て終了して物資を運びこんでいるところです。臨時魔法士は既に新基地で訓練を行っております。軍としてはいつでも攻め入る準備が整っています」

「戦力は整っているわけだな」
「ええ。魔人は人間十人分の力を持つと言いますが、こちらは数をおおきく上回ります。以前から軍に所属している兵士も今回の討伐に当てますから。……問題は魔物です。魔の森には少なくとも五百は魔物が住むと調査の結果が出ていますから」
「魔人さえ討てば魔物は恐れることはない。――臨時魔法士の処分については彼らに頼むしかないだろうが。では、今回の計画について。プリンシラ侯爵」
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