孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
夕食の席にはショコラがいた。人間の姿でもりもりと食べてくれている。
食卓に並んでいる食事はどれも我ながら美味しいし、みんな揃っているし。和やかな時間のはずなのだけど。
「報告があるの」
家に入ってきた時からショコラは浮かない表情をしていた。悪いニュースがあることは明白だ。
「魔の森近くに三ヶ月程前から建設されていた場所があるんだけど、どうやら基地っぽいのよね。しかも数百人単位で訓練もしている。この時期にたまたまとは思えないわ」
「森に入ろうとした様子は?」
「それは今のところないわね。先日の子供の件があったから、誰かが森に入ってきたらわかるようにしていたから。誰かが入った形跡はなし」
「今度こそ滅ぼそうとしているのか」
「……そうかもしれないわね。まあ子供の件もあったから魔物の見張りを強化しているだけと思いたいんだけど」
魔人を滅ぼす。つまり、それはアルト様を殺すということだ。
どうして。私が『白の花嫁』として立候補すれば、この世界は不幸に染まらないのではないか?
そう思って立候補してきたのに。ゲームのシナリオ通り、アルト様を殺そうと世界は動いているの?
「もしかして……私のせいかしら」
アルト様を救うために。リイラや国を救うために。
『白の花嫁』になったのに、私のせいでアルト様に死は近づいたんじゃないのか?
「私が立候補しなければ生き残りがいることは気付かれていなかったんじゃ」
声が震える。自分の選択肢が、アルト様をバッドエンドに導いているというのか。