孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「リイラ・カタイストの両親の保護はどうする?」

「そうね。今から彼らと話をしてくる。彼らにも生活があるし、リイラが訪ねてきた場合のことを考えてそのまま待機してもらった方がいいでしょうけど。彼らの元に国の使いが来るようであれば、すぐにこちらで保護するわ」
「そうだな」
「じゃあ善は急げということで。私はカタイスト家に話をして、その後はリイラを捜索してくるから」

 ショコラはそういうとすぐに犬の姿に戻って、二階に駆けていった。
 私も手伝いたい。じっとしてなんていられない。……でも、私に行動できることはない。国に捕らえられたら終わりだ。
 アルト様もそれは同じ気持ちらしく、落ち着かないようで指をトントンとテーブルに打ち付けている。

 その様子を見ているとアルト様の瞳が金色に変わり――。

 そうだ、今日は話が長引いてしまったから。気づかぬ間に『夜』が来ていた。

「アルト様、調子はどうですか」
「問題ない。部屋に行くか」

 アルト様はそう言うと私を軽々と抱き上げてダイニングルームに向かう。歩きながらも前髪にキスを落としてくる。『夜』のアルト様は白の花嫁溺愛モードに入ってしまっているけど、今日ばっかりはそんな気持ちになれない。
 部屋に入ったアルト様は私を抱いたままベッドに腰かけた。金の瞳はとろけるように熱い。

「あの、アルト様。リイラが私心配で」
「それどころではないと? だが今のアイノに何ができると言う」
「それはそうなんですが」
「アイノに今必要なことは、俺に魔力を分け与える事、それから今後に備えることだ。ずっと心配していてもどうにもならない」
< 177 / 231 >

この作品をシェア

pagetop