孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
31 知ること
リイラのことを考えるとそわそわと何にも身が入らず二日が過ぎた。朝食を食べ終えてぼんやりと洗い物をしているところにショコラが帰ってきた!
「リイラが見つかったわよ!」
「本当に!?」
キッチンの窓から入ってくるなりそう叫んだショコラに私も叫び返す。
「ええ。今から彼女の居場所とここを繋ごうと思っているの。私はすぐに作業に入るわ」
「よかった……!」
安堵で力が抜けて涙腺までゆるむ。まだ安心とは言えないけどひとまず国にリイラが捕らえられていないだけでも良かった。やっぱり逃げていたんだ。
「見つかったと言ったか?」
ダイニングルームにいたアルト様も小走りでキッチンに入ってきた。ショコラは頷いた後に少し顔を曇らせた。
「私が作業に入る間、二人に考えておいて欲しいことがあるのよ」
「なんだ」
「リイラは数人の生徒と共にいたわ。その中に有力貴族の息子たちもいる」
そうだ。ゲーム通りの展開ならば。リイラは攻略対象たちと逃げているんだわ。
「彼らも一緒にここに迎え入れてもいいのか、考えて欲しいの。彼らの希望としては、リイラを守りたいからどこまでも一緒に行きたいということ。でも彼らは国と繋がりがある。招き入れることは危険を伴うわね」
「彼らはリイラ・カタイストを魔の森に送ってもいいと思っているのか」
「反対している人もいる。信頼できない部分もあるから自分たちがついていきたいと」
「まあそうだろうな。有力貴族とは?」
「宰相の息子とか、将来の騎士団幹部とか……第一王子もいる」
「第一王子?」
アルト様の目がわずかに見開かれる。国が魔人を滅ぼそうとしているのだから当たり前だ。本来第一王子はリイラを処刑する側なのだから。