孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 褒めてくれた彼は真面目そうな青年で少し笑ったあと、彼は真剣な表情になり「明日貴女のこと命にかけてもお守りします」と言う。

「そんな。ご自身のことも大切にしてください」
「いえ。私は一度死んでいた身なのです。殿下たちが助けてくださったから命があるだけなのです。
 私たちは皆、国に選ばれた英雄だと自身を過信していて舞いあがっていました。裏に隠されていたことも気づけずに。私たちは皆マティアス様に感謝していますし、彼の作る未来を信じたくなりました。今はまだあまり想像できないことですけどね」
「わかります」

 私も数日前は想像つかなかった。アルト様とこの森以外で過ごせる未来を、想像したこともなかった。

「軍に残っている魔法士たちも皆平民ですから。国には思うところがありました。明日は思いっきりぶつけるつもりです」

 軍にいる臨時魔法士たちもこちら側についているのは、ほとんどリイラのヒロイン力のおかげだ。
 臨時で魔法士を育てるためにアロバシルアから教師が派遣されていて、それが攻略対象の一人。リイラは彼の好感度もあげてくれていたのだろう、今回の作戦に賛同してくれているらしい。彼はこの場におらず軍の方に残ってくれているそうだ。

「明日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いします!」
 人の良さそうな笑みを彼が向けてくれたところで「アイノ」と低い声がした。先程までマティアス様たちに囲まれていたアルト様が目の前に立っている。

「そろそろ屋敷に戻ろう。『夜』が始まる前に」
「あっ、もうそんな時間でしたか。では帰りましょうか。お話ありがとうございました」

「料理美味しかったです! ありがとうございました! 明日はよろしくお願いします!」 

 青年に挨拶もそこそこにアルト様に手を引かれる。リイラたちに軽く挨拶をして会場を後にした。
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