孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「私はプリンシラ侯爵家の次女アイノと申します。そうです、プリンシラ侯爵の娘です! ですが! 私はプリンシラ家で人間以下の扱いを受けておりました。与えられた部屋は物置。食事は家族の食べ残し以外ろくなものを与えられず。水をかけられ、ぶたれ……ここが地獄だったと思っていたのです……! それならば、魔人の元に嫁いだ方がいくらかマシだと思い、お伽話を信じてみたくなったのです。辛い日々から逃げようと思って、嘘をついてしまったのです!」

 大声で叫んだ私に民はどう反応していいか迷っているようだ。この場で聞くような内容ではない。聞かされても仕方ないことだ。

「関係ない! その女が国を騙したのは事実だ!」 と皆からの目線を受けていた父が叫ぶ。困惑している民とは違い、その場にいる大臣の視線が突き刺さっているからだ。

「お父様! 酷いですわ! もとはと言えば貴方が愛人家族を家に連れてきたことから始まりましたのに! 娘を一度も心配しようとせず、今から処刑までしようとしているだなんて!」

 予想していない醜い親子の言い争いが始まり、困惑した空気に包まれているなか

「黙りなさい」見かねた国王が低い声を出した。
「アイノ・プリンシラの心情は理解した。しかし身勝手な理由で国を騙したのは事実だ。お前がその身勝手な行為で、民は混乱に陥っており、暗黒期はいつもよりも深い。そのせいで死傷者まで出たのだぞ!」

 国王の威厳ある声に、困惑からとけた国民も再度ざわつき始める。
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