孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 でも騎士は間違いなくそう言った。そして「花嫁以外がいると警戒されますから、ここで私どもは失礼します。幸せを祈っております」とさっさと去ってしまった。

 私はもう一度門の方を向く。こういうとき、私を歓迎するように門って開くんじゃないの?
 門は固く閉ざされたままだ。

 ああ、騎士がいるから警戒しないのか。と納得して、騎士の姿も足音も完全に消えるまで待っていたけれど。それから五分たっても門は開かない。

「え?」

 え、もしかして。魔王とか私の夢だった? 乙女ゲームの記憶って夢?
 もしかして、白の花嫁って本当にただの生贄なの!?
 ここらに捨て置かれて、この森に住む魔物に食い荒らされるだけ――!?

 やばい。逃げるか。
 小石は落としていないけれど、目をこらせば荒れていても道はあるんだから。

 いやゲームを思い出して、アイノ!
 私が白の花嫁の任務を遂行しないと、国は荒れて人が死にまくる。私だって死ぬし、それに、せっかくここまできたんだ推しに会いたい。

「すみませーん!」

 私は門をガタガタ揺らすことにした。ガシャンガシャンと大きな音が鳴る。バサバサと鳥が飛んでいく。鳥じゃなくて魔物かもしれないけど。

「すみませーん!!! 魔王様いますかー!!! 白の花嫁です!!!」

 返事はない。
 花嫁は暗黒期でないと必要とされていないのかも。
 でももうここまで来たんだ。暗黒期が来るまで一年サンドラと過ごすのは困る。

「あのー! アルト様いますかー!!! すみません!!!」

 もうこうなったらヤケだ。ガシャンガシャンと門を揺らして叫ぶ。返事はないけどこっちも諦められない。

「すみません!!! アルト様!!!」

「――うるさい」
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