孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
04 生贄を受け入れてください!
門の向こうに姿を現してくれた魔王アルトは、ゲームの特徴通りの人だった。
さらさらの黒い髪から覗く切れ長の青い瞳。高い鼻にきゅっと結ばれた薄い唇。背はすらりと高くて顔の小ささは人間離れしてる。――まあ人間じゃなくて魔王なんだけど。
「人間がなんの用だ」
アルト様は私をじろりと見る。どう見ても歓迎されている感じはしない。
「私、白の花嫁です。あなたのもとに嫁ぐことになりました」
「いらん。帰れ」
即答だ。これが本当の門前払いてやつ。
おかしいな。ゲームのアルト様は花嫁行列でリイラを見た瞬間、執着愛を始めるのに。全く愛されている気がしない。
「いえ、必要なはずです。魔力のある人間がいないとあなたの心は荒れ狂うでしょう」
お天気お姉さんみたいな言い回しをしてしまったけど、いらんと言われても「はい、そうですか」とは引き下がれない。
「暗黒期が訪れるんです、一年後に」
暗黒期、という言葉を出すとさすがにアルト様もこちらを見た。
「そうか。ならば一年後に出直してくれるか。今は必要ない」
冷たく言い放つとアルト様は私に背を向けて去っていこうとする。