孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
近くの店で夕食をとってから夜の海岸をアルト様と歩く。
夜の海は静かで波の音がやけに響く。
「魚介類美味しかったですねえ」
「ああ」
「家で食べるものとはさすがに鮮度が違いました」
「ああ」
アルト様は生返事を返して海を眺めながら歩いている。
いつも口数が少ないアルト様ではあるけれど、さすがに少なすぎる。
「夜の海ってちょっと怖いですね、飲み込まれそうで」
「そうだな」
「何か考えてます?」
私が立ち止まるとアルト様も足を止めた。
そして少しだけ沈黙があって、アルト様は口を開いた。
「魔の森に帰る前に相談がある」
真剣な表情に私は小さく頷いた。
アルト様は再度歩き出し、私も隣に並んで歩き出す。
「ショコラに元の姿に戻ってほしいか?」
「そりゃ当たり前に、もちろん! 戻ってほしいです」
アルト様の問いかけに食い気味に答える。
「ショコラの生命の力は今はかなり弱い。だから犬の形にも人の形にもなれない。だから俺の魔力――生命力のようなものを注ぎたいと思ってるんだ」
「えっ、そんなことができるんですか」
「一応理論上では」
「でも、そんなことしたらアルト様は?」
ショコラに元の姿に戻ってほしい。でも、誰かのために誰かが犠牲になるのは嫌だ。アルト様の顔は真剣で私は不安になってたまらずアルト様の腕を掴んだ。
アルト様は腕を掴んだ私の手を優しく取ると、穏やかなまなざしをこちらを向けた。揺蕩う青は海みたいだ。
「勘違いするな。俺の命を全部ショコラに渡すわけじゃない」
「そ、そうですか」
夜の海は静かで波の音がやけに響く。
「魚介類美味しかったですねえ」
「ああ」
「家で食べるものとはさすがに鮮度が違いました」
「ああ」
アルト様は生返事を返して海を眺めながら歩いている。
いつも口数が少ないアルト様ではあるけれど、さすがに少なすぎる。
「夜の海ってちょっと怖いですね、飲み込まれそうで」
「そうだな」
「何か考えてます?」
私が立ち止まるとアルト様も足を止めた。
そして少しだけ沈黙があって、アルト様は口を開いた。
「魔の森に帰る前に相談がある」
真剣な表情に私は小さく頷いた。
アルト様は再度歩き出し、私も隣に並んで歩き出す。
「ショコラに元の姿に戻ってほしいか?」
「そりゃ当たり前に、もちろん! 戻ってほしいです」
アルト様の問いかけに食い気味に答える。
「ショコラの生命の力は今はかなり弱い。だから犬の形にも人の形にもなれない。だから俺の魔力――生命力のようなものを注ぎたいと思ってるんだ」
「えっ、そんなことができるんですか」
「一応理論上では」
「でも、そんなことしたらアルト様は?」
ショコラに元の姿に戻ってほしい。でも、誰かのために誰かが犠牲になるのは嫌だ。アルト様の顔は真剣で私は不安になってたまらずアルト様の腕を掴んだ。
アルト様は腕を掴んだ私の手を優しく取ると、穏やかなまなざしをこちらを向けた。揺蕩う青は海みたいだ。
「勘違いするな。俺の命を全部ショコラに渡すわけじゃない」
「そ、そうですか」