孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「暗黒期は協力してもらうが、その後は国に戻っていい」
「あのすみません。協力って何をするのかがわかっていないのですが、子供を作るということで合っていますか?」
私の言葉にアルト様は思い切りむせた。
でも、知らないのだ。ゲームの中では二人は恋人だったのだ。心を落ち着かせるだけのパターンを知らない。そもそもアルトルートでは、花嫁として迎えられてすぐに攻略対象たちがリイラを奪還しにきてそれどころではない。
「いや、子供は作らなくてもいい。花嫁だと認定した人間の魔力を分けてもらうと鎮まる。数ヶ月たてば落ち着く」
「そんなものでよかったんですか!?」
じゃああのゲームの悲劇はなんだったの!?
リイラが数ヶ月魔王に魔力を分けていれば誰も死なずに済んだじゃないか。……まあ悲劇というのはそういった小さなすれ違いで起こるものか。
「先祖はそのまま花嫁にして、子を作っていた。人間の世界に帰ったものはいないからそう思われるのも仕方ない。だが私は子孫を残すつもりはない。俺の代で最後にしたいのだ」
「えっ、なんでですか」
「……それは話す必要はない。数ヶ月だけ協力してほしい」
アルト様は初めてきちんと私を瞳にうつして真っすぐに言った。
協力――というかイルマル王国の都合でもあるのだから、協力せざるを得ない。しかし、どうしても気になることがある。
「あのすみません。ここまで来てなんなのですが、白の花嫁は私でいいのでしょうか」
「いいも何も、お前にお告げがあったんじゃないのか」
煩わしそうな顔になってアルト様は聞いた。
「そうなんですけど、アルト様に私、全然愛されていないなって」
「はあ?」
「魔王様は白の花嫁を一目見て、花嫁だと認定し深く愛すると聞いていましたから。魔王の愛は重いとも聞きました。それなのに、私全く愛されている気がしなくて」
あはは、と笑い声が聞こえたが、笑い声の主は頭を抱えているアルト様ではない。
え、やっぱりこの屋敷ってホラー館なの!?
「暗黒期に入っていないからだ。暗黒期に初めて目にいれた人間の女を白の花嫁だと認定する」