孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「どんな部屋でも構いません。実家では物置に住んでいましたし、そどんな暮らしでも文句は言いません!それに……!」

 それに、私は不安なことがある。

「暗黒期に入って、一番最初に目にした人間の女を花嫁認定するんですよね? 私以外の人を先に目に入れてしまったら困ります。私、花嫁になりたいんです!」

 先にリイラを見てしまったらどうするんだ、悲劇が始まってしまう! 絶対に一番に私を見てもらわないと。

「あははっ。アルト、一年後には彼女の力を借りるんだから。協力してあげなさいよ」

 どこからかまた笑い声と……女の人の声が聞こえて、私は顔を上げた。しかしこの部屋に女性はいない。私に都合のいい幻聴?

「ふん……アイノと言ったか。本当に一年後だと予言があったのだな」

「はい、そうです」

「はあ、わかった。では一年お前をこの家に住まわせよう。もし一年たっても暗黒期が訪れなければ帰ってもらうぞ」

「あ、ありがとうございます! もちろんです! あの、もし私のことを少しでも気に入ってもらえたら、暗黒期が終わってもここに住ませてもらうこと――――本当の花嫁にすることを前向きにご検討ください!」

 慌てて自分を売り込むと一瞬の間を置いて、アルト様は初めて口角をあげた。

「とても生贄とは思えんな」
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