孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
06 領地運営もできず溺愛も始まらない
ムスッとした表情のアルト様の前で、私は水を飲んだ。
ショコラがバスルームで水を汲みついでにアルト様を呼んでくれたらしい。
「人間は食べ物も飲み物もいることを忘れていたわ」
「国に戻った方がいいだろうな」
「こ、困りますよ!」
水を飲み終えて私は叫んだが、ショコラも困った表情をしている。
「でも私たち食事をほとんど取らないの。嗜好品として食べることはあるけど、基本的に何も食べなくてもいいから。だから料理を作れないの、貴族みたいに使用人もいないし」
「私、侯爵令嬢ですけど料理も作れます! だから大丈夫です!」
「……本当に侯爵令嬢? まあそれなら私が買い出しのときに食料を買っておけばなんとかなるかしら」
「全然なんとかなる!」
サンドラの食べ残しを食べる生活にはもう戻りたくない。
「過去の白の花嫁はどうされていたんですか? 人間ですよね?」
黙って私たちの話を聞いていたアルト様の瞳がまた鋭くなった。他の魔人や過去の話はタブーらしい、気をつけないと追い出されてしまう。
「過去は今よりたくさん魔人もいたし、人間もいたから毎日ご飯食べでたわねえ」
「――ショコラ」
「はいはい」
「一年後、数ヶ月ここにお邪魔することになります。 どちらにせよ直面する問題です! ここにいてもいいでしょうか」
「すごい執念よ、この子。どうする? アルト」