孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「あなたの顔に防御魔法をかけておいたから、これで埃は大丈夫だと思うわ」

「あ、ありがとう」

 このわんちゃん、魔力持ち?……しかも呪文も唱えずに?

「じゃあ掃除頑張ってねー」

 私が面食らってるうちにショコラはでかけていってしまい、一人取り残された私はとりあえず自室から掃除をすることにした。

 何もない部屋だ。後で家具は運んでくれると言っていたから、何もないこの部屋をまずピカピカに磨くか。窓を開けて換気するけど外も暗いので、掃除をする気分になんとなくなれない。

 ここでの生活、制限はかなりありそうだ。

 こういう国から追い出される話って。(私は自分から志願したけど)スローライフという名の領地経営サクセスストーリーになるんじゃないの!? 私も魔王の妻としてメキメキ内政物語! 前世の知識で無双! が始まると思ったのに。

 これでは本当にスローすぎる何にもないライフになってしまう。

 経営する土地もない、領民もいない! 閉ざされた森の屋敷の中! 無双できそうな前世の知識もない!


 お仕事ストーリーでないのなら。溺愛甘々ラブストーリーになるのが定番だ。

 でも暗黒期が来ていないアルト様は「人間いらん」だ。

 一番心配なのは、一年後「白の花嫁はやっぱりお前ではなかった」と言われてしまうことだ。
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