孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
幕間
――王都にて。
定期報告にと父の部屋に来たが、約束の時間よりも早く到着してしまった。先客との話がまだ終わっていないようで中から話し声が聞こえる。しばらく廊下で待つことにした。
――アイノ・プリンシラ。
その名前が聞こえて、動きが止まる。今日リイラから相談を受けていた名前だったからだ。
「アイノがいなくなってしまったの」リイラはそう言った。
すっかり僕たちの居場所として定着した屋上庭園で、ランチを食べながらリイラは切り出した。
「アイノってリイラの友人だよね」
「たった一人のね」
「最近ほとんど会えなくなったと言っていたね」
「今日アイノから手紙が届いていたの」
リイラは手紙を取り出して僕に見せる。僕と幸せになれと書いてあることに意識を持っていかれたことを恥じる。
「……これはお別れの挨拶だね」
「そうなの。心配になってサンドラ様にお声をかけたのよ。そしたらもうアイノは帰ってこない、と仰ったわ。それ以上は教えてくれなかったけれど」
「ふむ……でもこの手紙からすると、彼女の意志で出て行ったみたいだね」
「そうね。でも心配で」