孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 リイラは泣き腫れた目をしていた。たった一人の友人が突然消えて不安なようだった。


 ――――その消えてしまった女生徒の名前が扉の向こうで聞こえる。

「それじゃアイノ嬢は本当に消えたんだな」

「ええ。ご指示通り騎士は一旦その場を離れました。十分後にもう一度戻ると既に彼女の姿はなかったとのことです」

「であれば、彼女の妄想ではなかったということだな」

「そうなりますね。もしくは、魔物に食い殺されたか……まあ血の一滴すらなかったようですから、中に入ったと考えた方がいいでしょう。――生き残りがいるのは間違いありません」

「準備をせねばならんな」

「前回同様花嫁行列で……」

「いやそこは慎重に考えていかねばならん。ひとまず一年後に備えて結界の強化だ」

 これは一体何の話だろう。消えてしまったリイラの友人。
 彼女が消えたことに、国が関わっている……?

 足音がこちらに向かってくるのを感じて、僕は置物に身を隠した。
 扉から出てきたのは、数名の大臣と――あれはプリンシラ侯爵ではないだろうか。彼女の父も関わっている?

 僕は数分その場で待機してから父の元に向かった。
< 40 / 231 >

この作品をシェア

pagetop