孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 サラッと二十年ぶりに、とか言ってるし本当にこの子……いやこの人? は何者だ。

「ふふ、女はミステリアスな方がいいわよ。久しぶりに甘いものが食べたいわ」

「甘いものね! アルト様は甘いもの、召し上がるかしら」

「そういえばあの子が好きな物って何だったかしら」

「まあいいわ。いらないって言われたら私が食べたらいいんだから」

 朝食の甘い物といえば、フレンチトーストでしょう!
 陶器のボウルに卵を割って、牛乳と砂糖を入れて混ぜていく。

「あら、本当に慣れた手つき。侯爵家で使用人でもやらされていたの?」

「まあそんなところ」

 プリンシラ家にプラスの罪を加えてしまったけれど、使用人以下の扱いをされていたんだから間違いでもない。

 バゲットをナイフで切ると、ボウルに漬け込む。
 蜂蜜もあるし、ジャムまである。――そういやショコラはどうやってこんなにたくさんの物を買ってきたんだろう。ミステリアスわんこを見る。この小さい身体の何倍も買い込んでそうなんだけど。

「もっと漬け込んだ方がいいけど、もうお腹すいたな」

 前世で時短フレンチトーストを作るときはレンジでチンしてたけど、さすがにそんな電化製品はない。あれってどういう原理だったっけ。
 なんかレンジにまつわる怖い事件があったな。……そうだ、レンジは内部の水分を細かく振動させて摩擦熱を起こすんだった。
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