孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
08 当たり前の生活を当たり前に
「昨日伝え忘れていたが、一つルールがある。不用意に門の外に出ないでくれ。それ以外は何をしててもいい」
結局すべて綺麗に食べてくれたアルト様は、ナプキンで口を拭きながら切り出した。私は食後の紅茶を淹れているところだったので、カップを並べながら着席した。
「この屋敷に入る前に門があったのはわかるか? 森には三つの門と三つの区画がある」
私が頷くとアルト様は説明を始めた。
魔の森は三区ある。イルマル王国からの入り口の門から二つ目の門までが第一区。
ここは人間と魔物、どちらも入ることが許されている。人間側から攻撃さえしなければ魔物から襲うことはないし、魔物も森の外には出ようとはしない。
(だけど暗黒期になるとアルト様の制御が効かなくなり、森の門や人間の張った結界を破ってしまうほど凶暴化する。)
そして第二区。ここから人間は立ち入り禁止だ。
固く閉ざされた門も強い結界もあるし、万一越える事があれば魔物が襲い掛かる。
私もまだ正式な花嫁ではないので、一人で二区に出てしまえば食い殺されるらしい。
最後は第三区。この屋敷があるエリアだ。
魔物は入れず、魔人しか入れない。私はショコラが用意してくれた服を着ているから問題ない。
「第三区の中であれば自由に何をして過ごしていい。俺は第二区までしか出られないが、ショコラは自由だから外の物が必要ならショコラに頼め」