孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「これは、もにふく――」

「ショコラ」

 何か言いかけたショコラをアルト様は低い声で制した。なんと言おうとしたんだろう。

「暗いのは空にも結界を張っているから。魔物は空も飛ぶから空にも結界が必要なの。結界の色を黒にしているだけなのよ」

 結界に色とかつけられるんだ。おしゃれだな。

「アルト様。私、日光に当たりたいん――」

「お前は言い分が通るまでごねるんだろうな」

 アルト様はめんどくさそうに腕を空に伸ばした。雨が上がったときのように、部屋が一気に明るくなる。窓からおひさまの光がさしこんでいる!

「わ! ありがとうございます! うーんこれこれ! やっぱり太陽がなくっちゃね!」

 私は立ち上がり、ぐーんと伸びをした。
 特別晴れが好きなわけでもなかったけど、ないと恋しい。太陽を浴びないと一日が始まった気はしない。

「……眩しい」

「二十年ぶりの光だもんね」

 ぎゅっと眉間を寄せてしかめ面のアルト様を、ショコラがニヤニヤと眺めている。

「アルト様。太陽の日を浴びるというのはとても大切なことなのですよ。お医者様もそう言っていました」

 雑学程度ではあるけど、太陽の光とうつのリスクは関係があると聞いたことがある。日照時間が少ない地域はウンタラカンタラ的な。
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