孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
何かが、彼を苦しめている。たった半日過ごしただけでそれだけわかる。その何かは全然わからないけど、お日さまに当たらなければ元気だって出ないんじゃない?
私は乙女ゲームのヒロインじゃないから。
あなたの心をすぐには救ってあげられない。リイラが私や攻略対象に欲しい言葉を真っ直ぐくれたような、アルト様に刺さる言葉なんて全く思い浮かばない。むしろ怒らせてしまう気すらする。
でも、人間らしい環境は整えられるんじゃないだろうか。
魔人の常識はわからないけど、二十年じめじめ暗く過ごしてきたのは事実なんだから! アルト様も半分人の子だしね。
いつかアルト様に寄り添うことができるように、まずは使用人の立場でいいから快適な環境を作り出すんだ!
「これだけお天気がいいなら洗濯物もはかどりますし、家庭菜園なんかも出来そうですね」
スローライフといえば、自給自足である。
領地の改革はいらないし、三人が食べられるものだけになるけど。暇つぶしがてら挑戦しても良さそう。
「案外やることはたくさんありますよ!」
私の宣言にアルト様は勝手にしろとため息をついたのでした。
成り上がらなくてもいい。当たり前の生活を当たり前に過ごす。快適な衣食住は気持ちを明るく爽やかにさせるんだから!
ふかふかのお布団で眠って、美味しいご飯を食べて、掃除もちょっと丁寧にして、のんびりまったり過ごさせてもらおう。
私が目指すものは花嫁! 一年後にはアルト様の心を射止めて溺愛生活よ。