孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
イルマル王国は魔法学園アロバシルアに通わなくては魔法を取得できない。魔法発動には呪文が必要で、その全てを学園で学ぶから。イメージとしては、前世の世界で一番有名な魔法学園が近いと思う。
「学園?」
ショコラは不思議そうな顔をして質問してくる。
「そう。人間は十六歳で魔法学園に入学して、そこで初めて魔法を習うの。だから私はまだ魔法歴半年で」
「へえ。今の人間は魔法学園で学ぶのねえ」
「昔は学園がなかったの?」
「少なくとも百年前までの花嫁で魔法学園に通っていた人はいなかったと思うわ」
ショコラ、百歳以上なんだ……。
「あ、でも今までの花嫁たちは平民だったから。魔法学園に通えなかっただけかもしれないわね」
今までの花嫁が平民?
違和感を感じて、食後のお茶を淹れている手が止まる。
そういえば、私が来た時も「花嫁は平民」とアルト様が言っていた。
おかしい。ゲームの登場人物でもリイラは「イルマル王国で唯一魔力があらわれた平民」と紹介されていた。
「イルマル王国では魔力が現れるのは、貴族だけなの。だから魔法学園には貴族しかいないわ。あ、一人特例で平民の子がいたけどね。私の友達なの」
「魔力があるのは貴族だけ?」
質問したのはアルト様だった。いつも興味なさげにどこかを見つめている目が、熱く私を見つめている。