孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「そうです。魔法は習わないと発動しないし、許可制だから魔法学園アロバシルアに入学しなければ使用許可も降りないんです。魔法は危険でもあるから法律から学ぶんです」

「おかしいわね。さっきも言ったけど、百年より前の花嫁はずっと平民だったし、皆独学で親や魔法書から学んだと言っていたわ。この百年で教育環境か法整備が進んだのかしら」

 人間にとっての百年は長い。法律だって、常識だって変わっていそうだ。平民の魔力は長い時間をかけてなくなったのかもしれない。

「魔力の有無はどこで調べる?」

 アルト様は私とショコラの話にほとんど入ってこないけど、この件は気にかかるみたい。

「国の魔法省が管理しているみたいですよ。そこに星詠み師がいて入学数ヶ月前になるとお告げが来るみたいです。私たち貴族も魔力が現れるのは全員ではないですから、十六になるまでは魔力が現れるようにお祈りをしていたんです」

「ふむ」

 もう先程までの興味はなくしたみたいで、アルト様は食後のお茶を飲んだ。

「あ、そうだわ。うちに魔法書いくつかあるわよ! 過去の花嫁が持ち込んだものだから相当古いかもしれないけど。アイノ、それで勉強してみたら?」

「したい!」

 そういえば今まで魔法書など見たことがない。プリンシラ家には父の書物もたくさんあったし、国民が皆入れる国で一番大きな王立図書室も何度か行ったことはあるけど。魔法はアロバシルアでしか学ぶことが出来ない。百年前の花嫁に感謝!

 私はもうイルマル王国ではなく魔王の花嫁(予定)なんだから、魔法を使うのに国の許可なんていらない。なんてたって魔王の花嫁(予定)ですからね!


「魔法入門書なら書斎にある」

 そう言うとお茶を飲み終えたらしいアルト様は席を立った。

「ありがとうございます! あっ、アルト様、明日の食事のリクエストってあったりしますか?」

「……フレンチトースト」

「はい! 明日の朝楽しみにしててください!」

 ショコラが用意してくれた紙に今週分の献立と必要な食材をメモしていく。

 これからぐうたら多めの丁寧な暮らしに魔法の勉強が加わることになりそうです!
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