孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
破裂音がなり、衝撃に目をぎゅっとつむる。恐る恐る開けた視界には無残に飛び散った人参と玉ねぎがあった。
野菜どころかボウルまで粉々になっている! 爆発のせいでキッチンに並んでいたフライパンや様々な調理器具も吹っ飛んでいる。
「う、魔法って調整が難しい……残りの材料は無事だったのが救いね」
三分の二残しておいた人参と玉ねぎは鍋とフライパンごと吹っ飛んだけど、上手に着地してくれていたので中身は無事だった。
「私にはまだ早かったか……」
料理を爆発させる系ヒロインにはなりたくない。攻撃魔法クッキングはしばらく禁止よ、禁止!
「何の音だ」
珍しく慌てた雰囲気のアルト様がキッチンに顔を出した。
キッチンの惨劇に眉をひそめるけど、なんとなく状況を察したらしいアルト様は肩の力を抜いた。どうやら心配してくれたみたい。
「すみません。魔法の加減を間違えてしまったみたいで」
「何の魔法を使った」
「攻撃魔法です」
「人参相手にか?」
アルト様は壁に張り付いた無惨な人参の姿に同情するように言った。
「やっぱりやりすぎでしたか。理論的には間違ってないと思ったんですが」
「何をしようとしたんだ」
「ポタージュを作ろうと思ったんです。ポタージュって知ってますか?」
「知ってる」
「人参と玉ねぎを粉砕しようとしたんです。……あ、でも大丈夫ですよ! まだ半分以上残ってますから。夕飯には間に合います」
私はボウルとフライパンに残っている人参と玉ねぎを見せて慌ててアピールした。アルト様は無事な野菜たちに目をやってから
「また爆発させるんじゃないだろうな」と私に視線を戻した。