孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

11 布団をかけるみたいに優しく

 

「ルーナ・ヴェーシ」

 呪文を唱えると手の平から柔らかい水のシャワーが降り注ぐ。下に置いてあるプランターの土に水がしみこんでいく。

 暇つぶしかつ丁寧な暮らしのために家庭菜園を始めてみることにした。
 だけど知識は全くない。前世で料理はそれなりに好きだったみたいで料理の知識はなんとなくあったけど、食材の育て方の知識の方はまるでなかったから。

 ひとまず家庭菜園の最初の一歩! プランター栽培から始めることにした。
 プランター栽培といえばミニトマトのイメージがあったんだけど、季節的に今は違うみたい。ショコラが店主に一番簡単なものを聞いて種を買ってきてくれた。

 それがこのラディッシュの種というわけ。一カ月くらいで収穫もできるらしく、初心者にはちょうどいいみたい。

「何をしている」

「うわっ、ビックリした」

 突然後ろから声を掛けられて振り向くとアルト様が立っていた。庭でアルト様を見かけること自体珍しい。

「アルト様! どうかしましたか?」

「時間になっても来なかったからだが」

「あ! もうそんな時間でしたか、すみません!」

 あれから一週間。アルト様は毎日十時に魔法を教えてくれている。めんどくさそうな顔をしながらだけど、なんだかんだ真面目な彼は丁寧でわかりやすく基本から教えてくれている。

「探しに来てくれたんですね。ありがとうございます」
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