孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
14 魔の森にもクリスマスがやってくる
魔の森にも冬がやってきた。
ラディッシュたちは無事に収穫できたし、秋に植えた冬野菜たちもそろそろ収穫が近づいてきた。
ここは世間から切り離されていて実感がわかないけど、そろそろ魔の森にもクリスマスがやってくる!
「なんだこれは」
リビングルームに現れた、私の身長程あるモミの木を見てアルト様はしかめ面をする。
「クリスマスツリーですよ」
「それは知っている。なぜここに」
「クリスマスが近づいてきたからですよ」
フォスファンタジアは『日本人が想像するゆるふわなんとなくヨーロッパ』世界観を採用しているので、四季やイベントも日本と同じでとてもやりやすい。ついでに言うと料理や食材も純和風的な物以外は揃っているし不便はない。だからクリスマスも、ある。
「私がモミの木を調達してきたのよ」
ツリーの下から赤いリボンをくわえたショコラが顔を出した。私はそれを受け取ってもみの木に飾っていく。
「屋敷にあったいらない端切れを使って、リボンにしたんです。これを飾るとクリスマスツリーになりますよ!」
「ツリーは知っている」
「季節のイベントをするなんて二十年ぶりだから照れてるのよ」
ショコラはニヤリと笑うと、二本足で立って器用に赤いリボンを結んでいく。
「小さい頃のアルトはクリスマスパーティーを楽しみにしていたのにねえ」