孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
15 ヒロインの好感度MAXモブ
リイラ、とおじさんが呼んだ。そして返事の声。まさかとは思ったけれど。
実際目の前にリイラが現れるとどうしていいかわからず固まってしまう。おじさんとショコラは私たちを見比べて様子をうかがっている。
「アイノ! 会いたかった!」
レジから飛び出してきたリイラが私を抱きしめる。固まってしまっていた私だけどようやく我に返り、身体をよじってリイラの腕から抜け出した。
「すみません。どなたですか? 誰かと勘違いしていませんか」
迷惑だというように素っ気なく目をそらす。ここで知り合いに会うだなんて絶対にダメ。人違いでなんとか押し切るしかない。
「ううん。髪色が変わったくらいで私がアイノを間違えるはずないわ!」
私の反応をものともせずに、リイラは笑顔で自信満々に言った。キラキラの瞳に見つめられると押し切られてしまいそうだ。これがヒロインパワー……!
「それに、アイノの髪飾り。それは私がプレゼントしたものでしょう!」
しまった。髪色は変えたけど、いつものままの恰好で来てしまっていた。でも、言い訳させてほしい。だって、まさか王都でもない場所でリイラにピンポイントで会うだなんて思っていなかったわよ!
「どうして突然学園を辞めてしまったの。私、本当に心配で」
心から私を心配してくれているリイラを目の前にすると嘘をついているのが心苦しくなる。そもそも想定外すぎて咄嗟に何も言い訳が思いつかない。どうしよう、助けて! 私はショコラにSOSの合図を送る。
「リイラの知り合いだったのか。良かったら、お茶でもどうですか?」
何も知らないおじさんがニコニコと提案してくる。や、やめてください!
「お茶していらっしゃい」
ショコラは観念した表情で肩をすくめて言った。私は久々にリイラとお茶をすることになってしまったのだった。