孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
リイラは雑貨屋の二階にある小さなリビングルームに私を案内すると、紅茶を淹れてくれる。勝手知ったる様子を見るにリイラはこの家の関係者なのだろう。
「ここはリイラの家なの?」
「ええ、そうよ。ここは私の実家。さっきのはお父さん」
なんと。つまりアルト様とリイラは……えっと、アルト様のお母様の弟の……とにかく二人が親戚にあたるのは間違いなかった。
私の前にカップを並べてくれるリイラに続けて質問をする。
「でもリイラもどうしてここに? 学園は?」
「お母さんが先日ケガをしちゃって。お見舞いと手伝いに今週末だけ帰ってきたの。クリスマスに向けての仕入れも忙しかったから」
なんというバッドタイミングだ。もはや運命にすら思えるタイミングで私はここに来てしまったらしい。
「私のことはいいのよ。アイノはどうしていたの? 元気そうでよかったけど」
「……えっと、お姉様のいじめに耐えられなくなって。サンドラお姉様と同室になってしまったこと知っているでしょう。辛くなってきた時に、私の本当のお母様の親戚のもとに引き取られたの」
サンドラの罪をまた一つ増やしてしまった。ごめん! でも学園を辞める言い訳はこれくらいしか思いつかなかった。