孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「なるほど、わかった」
夜。アルト様の好物をダイニングテーブルに並べて、私はテーブルに頭をこすりつけていた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「アイノが悪いわけじゃないわ」
「終わったことは仕方ない。問題はない」
アルト様はいつもと変わらない表情で魚のムニエルをナイフで切り分けて口に運んだ。
「何か問題があるか?」
「ないと思うわよ、大丈夫よアイノ。私がもっと気を遣っていればよかったの。ごめんね」
珍しく落ち込んだ表情でショコラが言った。
そう、現時点での問題はそこまでない。
ショコラいわく雑貨屋の店主、つまりリイラの両親は魔族と関係があることは、誰にも言わないようにしているらしい。あの雑貨屋を継ぐもの、いつかはリイラの弟に伝えることになるらしいけれど。
「リイラは学園の友達だったんです。雑貨屋の娘ですけど、普段は王都の魔法学園に通ってて彼女の周りには貴族がたくさんいます」
「今後はリイラの帰省予定を店主に聞いておくわ。あちら側からこちらには来れないようになっているし。……それにもしてもこんな偶然あるのね」