孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

16 あったかクリスマスの過去と未来


 ご機嫌で鼻歌を歌っているのはもちろん私。今日はクリスマス!
 チキンを焼いて、ミートパイを作って、ツリーに見立てたサラダも可愛い。アルト様に魔法を教えてもらって作れるようになった人参ポタージュも。自分で育ててみた苺を乗せたショートケーキも我ながら最高の出来だ。
 ご馳走たちをリビングルームに運んでいく。今日はダイニングではなく、ツリーのあるリビングルームで食事をすることにしたのだ。
 ツリーには可愛いジンジャーマンクッキーが飾ってある。先日アルト様とショコラと一緒に作ったものだ。背の高いアルト様が身を屈めて小さいジンジャーマンの顔を慎重に彩っていく様子を思い出して頬が緩む。

「機嫌がいいな」
「メリークリスマス、アルト様! ショコラ!」
「朝も言っていた」
「昼もね」
「何回言ってもいいんですよ、メリークリスマス!」

 アルト様とショコラがリビングルームに入ってきた。
 並んだ料理を見るとショコラが「わあ!」と想像通りの喜びの顔を見せてくれる。アルト様は珍しくワインを開けて、心なしか機嫌がよく見える。
 ゆっくり楽しみたかったのに浮かれていたからかあっという間に食べ終えてしまった。

「今日かなり寒かったから雪が降ると思ったんですけど、ホワイトクリスマスにはなりませんでしたね」

 ケーキを切り分けながら雪を連想した私がそう漏らすと、アルト様が指をパチンと鳴らした。
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