孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 でも、そんなどうしようもない過去も解けていく。目の前にいる二人は私が促すこともなくすぐ身につけてくれているから。

「あったかーい。犬の格好の不便なところて寒いところなのよね。お腹が地面に近いから寒いのよ」

 食べている時は人間の姿になるショコラだけど、腹巻きをつけるためにわざわざわんこ姿に戻ってくれている。ショコラの可愛いお腹が冷やされていたのは大変だ。もっと早くプレゼントしたらよかった。

「二人ともよく似合ってます」

 渡した好意を受け止めてくれる人がいる。それが嬉しい、何よりも。

「私、こんな幸せなクリスマス久しぶりです。こんな日はもう来ないと思っていましたから」

 美味しいご飯を作って、一緒に食べてくれる人がいる。美味しいねと言って、頷いてもらえる。
 そんな当たり前のことが、こんなに暖かなんだ。当たり前のことなのに、

「忘れてました、幸せな気持ちを。ありがとうございます」

「アイノ、私からもプレゼントがあるの」

 ショコラは優しく微笑んでくれる。彼女がリビングルームのドアの方を向くと、扉が開いて大きな箱がふわふわと飛んできた。

「開けてみて」
「これは……」

 中に入っていたのはレースの刺繍が美しい深いブルーのドレスと、ドレスに合うブルーグレーのケープだった。
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