まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!
「私がなにをしたと仰るのですか?」

「真相を暴いたとばかりに事を荒立てようとしたことだ。離縁させて私に娘を嫁がせようと企んだのだろう? エロイーズを伴って来たのがその証拠。私はパトリシアを妻に選んだんだ。貴殿の令嬢に興味はない」

 円滑な執政のためには、権力ある公爵家と良好な関係を保ちたいと思うものだろう。

 それなのに公爵令嬢を冷たく突き放したアドルディオンにパトリシアは目を見張り、自分のためにそうしてくれたのだと思うと心が震えた。

 午前中の馬車内での気まずさがあるので愛されていると勘違いはしないが、気に入られているのは感じられた。

 条件が合うなら妻は誰でもいいわけではないようだ。

 喜びが膨らむけれど、笑顔にはなれない。

 ショックを受けたエロイーズが両手で顔を覆ってシクシクと泣き出したからだ。

「あんまりなお言葉ですわ。わたくしは、いつか殿下の妻となる日を夢見て、これまでひたむきに努力してまいりましたのに……」

(私、勘違いしていたのかも。私と同じようにエロイーズさんも家のために妃になりたかったんだと思っていたけど、本当は殿下が好きだったのかも)

 恋を知った今は彼女に同情して悲しくなる。

 もし自分が現れなければ、エロイーズが妃となる道もあったのではないだろうか。

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