財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
「なぜ、私に来たのですか? 私、結婚なんて……覚悟だってないのに」
「確かに他の分家にも女子はいる。だが、婚約者がいないのは采羽だけなんだよ」
え、そうなの……?確かに、私はお兄様にもお父様にも“采羽は自由にしなさい”と言われて育ったから許婚はもちろんいないし婚約者だっていない。
ということは、私より年下の子達もみんな婚約者がいるってことだよね!?
「本家には逆らえない。特にお祖母様からの話は絶対だ」
「……でも、私、好いている人がいるんです」
「好きている人? 付き合っているのか?」
「そうではなくて、完全な片思いです。相手は私のこと知らないだろうし、私も名前すらわからない人なんですけど……毎年あるお茶席に参加してくださるってだけで」