財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
あはは、じゃないよ。
これじゃあ『逃がすものか』と言っているようなものだ。幼い頃も怖い印象があったけど、会っていなくてもわかる威圧感……半端ないわね。
「そうね。お父様、後で本家の連絡先を教えてちょうだい。私、お礼がしたいわ」
「あぁ。箱と一緒に持ってくよ」
「ありがとうございます、お父様」
こうして、私は突然やっていた縁談を受けることになる。
だけど、うっかりしたことに縁談相手のことを聞くのを忘れたことに気付くのはずっと先のお見合い当日の朝だった。