財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
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車を走らせること二時間。無事到着して降りれば、そこには緑豊かな光景が広がっていた。そして趣のある建物が目の前に立っている。
「采羽」
そう声をかけられて振り向くとそこにはお祖母様が立っていた。数年ぶりに会うからか少しお年を召されたなぁと思ってしまった。
「おひさしゅうございます。お祖母様」
「改まった挨拶はいい。着物、似合ってるわよ。素敵ね」
「ありがとうございます。素敵な着物を送ってくださってありがとうございました……」
「それは電話で聞いたわ。さぁ、いきましょうか……きっと先方は待っていると思うわ」
私は「はい」と頷いてお祖母様について旅館の門を潜ると入り口では仲居さんがいらっしゃって「いらっしゃいませ」と言い綺麗なお辞儀をした。
「黒瀬です」
「黒瀬さまでございますね。お待ちしておりました……オーナーも待っておりますのでご案内します」
オーナー?そのオーナーが私のお見合い相手なの?どうしよう、なんだか急に緊張してきたんだけど……と一人ドキドキしていれば部屋の前に到着した。