財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
「こちらでございます。……オーナー、ご到着されました」
仲居さんが告げると、中から声がしたのを確認してドアを開けた。そこは和室でお座敷だった。中に入ると、そこにはスーツを着た男性がいて私を見ると立ち上がった。
「こんにちわ、黒瀬さん」
「……え、あ、あなたは……」
思わず驚きの声が出てしまい口を噤む。でも仕方ないと思う。だって、私がずっと片思いをしてきた――その人だったから。